工芸美術の素材と技法

金属

「鋳金」は、高温で溶解した金属を鋳型に流し込み成形する技法である。青銅・黄銅・白銅・金・銀・鉄・アルミニウム・ステンレス等を用いる。技法には込型・蝋型・生型等がある。原型は粘土・石膏・木・蝋・発泡スチロール等を使い、自由で多様な造形ができる。大きな作品として奈良、鎌倉の大仏が代表である。

「鍛金」は金属の板や棒を金槌・木槌等で打ったり、絞ったり、延ばしたり、曲げたりして造形する技法である。溶接・ロウ付・リベット等も行う。金・銀・銅・黄錮・アルミニウム・鉄・ステンレス等が主な素材で、大きな作品としてはニューヨークの自由の女神像がある。

「彫金」は、鋳金・鍛金で造られた造形物の表面に「タガネ」で模様を彫ったり、透かしたり、他の金属をはめ込んだり、レリーフとして打ち出したりして、加飾・造形する技法である。

金属の色は、素材そのものの色の他、薬品等で「錆」を人工的に作り出した緑青・煮色・赤・黒・茶色等があり、錆の色を利用している。

漆とはうるしの木から採取する樹液の事である。縄文時代より塗料・接着剤として使われてきた。
漆液は流動的なものであるから、多くのものは素地の上に塗ることにより成立する。素地・下地工程を経て朱や黒漆を塗って、無地として仕上げるもの、また装飾的な技法として、蒔絵(金銀粉などを蒔く)、螺細(貝を切り貼る)、沈金(塗面を彫りそこに金粉等を入れる)、平文(金属の板を貼る)、卵殻(卵の殻を貼る)、キンマ、彫漆など数多くの表現方法が存在する。また粘土等で型を作り麻布を貼り自由な形態を作る乾漆技法もある。

陶磁

素地土の違いにより、陶器(素地に吸水性があり柔らかな感触)・磁器(素地に吸水性がなく硬くガラス化している)・炻器(せっき・粘土質の土がよく焼きしまり無釉薬で吸水性のないもの)等に種別化され、焼き物の総称として陶磁と呼ぶ。

成形はロクロ・手びねり・型・板作り・鋳込等があり、それらに装飾技法として、顔料や化粧土で絵付、素地表面に彫り・象嵌等を施し乾燥の後、約800度で素焼、後に下絵付、釉薬を施し、1200度以上の高温の窯で焼成する。本焼きの後、上絵具で絵付、約800度で焼付・加飾した上絵付作品もある。素地・成形・装飾・施釉・焼成の各工程に作者独自の様々な創意工夫をしている。

染織

染色は、布を蝋、糊、絞り等で防染して図を表す方法で、主に蝋染、型染、スクリーン捺染等があり、他に絞る、刷り込む、挟む、浸す、脱色等の技法があり、布や染料の素材を生かした作品を生み出している。

織物は、織機を用いた綴織、絣織、組織があるが、織機によらない編む、結ぶ、組む、縫う等、素材感が豊かに出る技法がある。染、織とも作者の創意と技法解釈により染織の特性を生かした独自の表現となっている。

主な特質である可塑性を用い、彫る、打つ、曲げる、絞る等して造形。牛、豚を始め素材は多種である。着彩は主に染料、顔料を用いる。

ガラス

ガラスは、調合された原料を高温で溶かし、やわらかい間にパイプに巻き取り、吹いて作ったり、型に流し込んで成形し、徐冷すると完成する。成型工程中の技工の他、更に、カット、グラヴィール、サンドブラスト等の加飾や、フュージング、パートドヴェール、溶着等多彩な加熱加工ができる。これらの加飾法を複合すると、一層華麗なものとなる。

七宝

七宝は、金属を加工した素地に、ガラス質の釉薬を水溶きして盛り、乾燥させて800度前後で焼成溶着したものである。銀線・銅線を植線し、施釉して繰り返し焼成後、研磨して仕上げる有線七宝や、金・銀・銅箔を用いたり、書き割り・噴釉法・マーブル技法等数々の技法を駆使することにより、個性豊かな表現方法が広がっていく。また、七宝と他の素材との融合にも、未知数の可能性がある。

人形

人形は、古くからは、桐材を彫り、みがき、胡粉で仕上げる技法が主流であるが、現在は、新しい素材(木・石膏・合成樹脂・陶土・紙)も自由に駆使できて、ひとがたを通して、心象的表現や、写実的表現などで造形されている。

木工は、欅・檜等の広葉樹や針葉樹を用い、木肌の色調・木目の変化を生かした造形が特に大切にされる。素材感は漆等の着色によっても微妙に変わり、仕上がりの装飾性を強調したものもある。

竹工は、竹の持つ自然の趣きを生かし、編む、組む等の技法が主体で、着色には主に染料や漆が用いられる。

紙の原料である「麻」「椿」「三椏(みつまた)」「雁皮」「パルプ」等を使用し、染色した紙の織維を用いて薄く盛り合わせながら、絵画の如き意図表現をする。また型紙を用いた造形は紙の特質が生かされる。切る、破る、重ねる等は、紙独自の技法といえる。

その他

アクリル等の合成樹脂や、異種素材を複合的に組み合わせて制作する等、現代的な造形作品も少なくない。