第五科 書

大崎雨萩おおさき うしゅう

特選

五月

調和体 160×75

受賞理由

 古典が無いといわれる調和体分野であるが、この作品は王鐸の書を基盤に、かなを上手に調和させている。大らかに雄然と書き進め、大河の流れを感じさせる作品であり残された白の美しさにより清爽な空気が漂う。

作家のことば

 美しい日本の四季、その十二ヶ月を幽玄華麗な文体で表現した泉鏡花の『月令十二態』から、色彩の鮮やかさが胸に残った「五月」の一文を素材としました。制作にあたっては可読性を重視し、文意に運筆のリズムを融合させたいと願いました。迷い、悩みもいたしましたが、枚数を重ねるごとに、無心になれたように思います。

藤の花の紫は、真昼の色香朧にして、白日、夢に見ゆる麗人の面影あり。