豊原睦子
特選
春の夕暮れ
かな
60×175
受賞理由
『関戸本古今集』等の古筆を基礎に、散らし書きの要素を巧みに取り入れた大字仮名作品。文字の粗密、墨色の変化、強く多様な線質が相まって、立体感のある美しい景色を創り出している。上部の余白も際立って印象的である。
作家のことば
今回の作品では、仮名が持つ至簡の美を念頭に、墨法の美、中でも墨の潤渇に意識を配りました。また作品にリズムを与えるため中央に墨を集め、紙面の上部に要白の美が感じられるよう構成し、後半部分は行間の響き合いを意識して筆を走らせました。しかし力不足のため、まとまりを欠く作品となったことは今後の課題です。
春の野に心伸べむと思ふどち
來し今日の日は暮れずもあらぬか
春されば樹の木の暗の夕月夜
おぼつかなしも山陰にして