第五科 書

森上光月もりかみ こうげつ

準会員・審査員

春の月

85×170

作家のことば

 新古今和歌集の中から春の歌を二首選び、三尺×六尺の紙に書いてみた。梅の香り、春の月、ふるさとに帰っていく雁の群れ等、春の風情満載の中に漂う少々のさびしさと美しい情景をいかに表現すれば良いのか…。中央部で力強さを表現しつつも、夜更けの冷たい空気感と雁の鳴く哀しそうな声が響く世界感を表現したいと願った。

〈釈文〉
梅が香にむかしをとへば春の月
こたへぬ影ぞそでにうつれる
ふるさとにかへる雁がねさ夜ふけて
雲路にまよふこゑきこゆなり