第五科 書

特選

岩井秀樹いわい ひでき

定家 月のうた

作家のことば

 一一九〇年秋、「花月百首」と題した歌会。定家が詠んだ月の歌を題材にした。時期やテーマから西行追悼の歌会かと推察される。
 その歌に思いを重ね、古筆の品格を失わない仮名を描きたいとの思いで書した。古筆の連綿・墨の濃淡・散らし方を模し、料紙の立体感の力も借りてしっとりとした景色を演出したかった。

〈釈文〉
秋の夜は月ともわかぬながめゆゑ
そでにこほりのかげぞみちぬる
見るゆめは萩の葉風にとだえして
思もあへぬ閨の月かげ
(以下略)