第五科 書

日比野光鳳ひびの こうほう

顧問

鳰の海

35×49

作家のことば

 鳰の海とは琵琶湖のこと。水鳥が多く生息する水辺を意味する。平安末期、貴族社会から武家社会へと大きく時代が変革する中、藤原家隆はこの和歌を詠んだ。「季節が移り、月光が湖面を揺らし静かにきらめく波が秋の到来を知らせている」という平明ながらも幽寂で、じつに絵画的な世界。今回も歌の持つ平明さを崩さぬように仕上げた。

〈釈文〉鳰の海や月の光のうつろへば
波の花にも秋は見えけり