第五科 書

日比野博鳳ひびの はくほう

会員

風の音

80×205

作家のことば

 拾遺集から凡河内躬恒の歌を選んだ。かな書は、日本語の言葉の意味や響き、情景や気分、心象風景を文字だけで描く世界だが、表現そのものは選択肢が多く、作家によって生み出される姿は多様である。ただ、その抽象画とも共通する自由度の高さはメリットでもあり、可読性の低さがハンディーとなる諸刃の剣だといえよう。

〈釈文〉大空をながめぞくらす吹風の
音はすれども目には見えねば
いづこにか今夜の月の見えざ覧
飽かぬは人の心なりけり
(以下略)