第五科 書

松村博峰まつむら はくほう

無鑑査

心正しければ則ち筆正し

52×234

作家のことば

 唐の穆宗帝から書の上達法を問われた柳公権は、いとも簡明に「用筆は心に在り。心正しければ筆正し」と対えた。これには、当時、不老長寿の仙薬とされた金丹に耽り、放縦に流れていた皇帝を諌める意図があり、皇帝も居住まいを正したという。いま、風に罹らぬ魔法の薬も永遠に無いことを自戒せなばならない。