第五科 書

牧野聖雲まきの せいうん

特選

一木桜

70×174

受賞理由

 大胆な造形を強靭な線で書き、大字かなの魅力を遺憾なく発揮した作である。漢字、変体かなを多用しているが要所に縦線や大きな間を配し、重さ、硬さが出ぬよう、絶妙に構成されている。

作家のことば

 『線は強く』『作品は動く』を主題に、墨色に意をはらいながら、縦にながれる縦線と、横への展開の横線の働きを対比させ、持続性のある時間表現から生まれる大きな間の表現に思いをはせ制作しました。行間の白を行の中に取り込みながら、全体感として明るく静かな表情の大字かなを目指しました。

〈釈文〉雪しろき屋根に当りて此朝
雀の声のかそけききこゆ
わが庭の一木の桜ちり過ぎて
見の清しくも今は花なき